ヒューストンで歯科医院を開業して、今年で２０年になります。広島から ヒューストン、それなりに大冒険だなと思います。そんなわけで、今回は冒険を テーマに書いてみます。
現代において冒険とは何なのか？地球上に限っていえ ば、すでにGoogleで上空から見ることができるし、すでに人跡未踏の地は残っ ていないじゃん、という本を最近読みました。著者によると現代の冒険の定義 は、どうやら脱システムらしい。例えば北極を一人で歩いても、GPSを使えば現 代のシステムの中にいるので冒険とは言えない。しかし、同じことをしてもGPS なしで無補給であれば、たとえ未踏の地でなくても冒険だというのです。 考えてみると、日本を離れヒューストンへ来ている我々全員、ある意味 “ 冒険 者 ” で、今でも心のどこかで冒険したいと思っているはず。しかしこちらに来て はみたものの、日常に追われている。ここらでそろそろ家族を連れて、また冒険 してみたくはないですか？うまくいけば、奥さんや子供たちに冒険家の側面を見 せることができ、尊敬の念を抱かせることができるかもしれないですよ。（今回 は、旦那さんが、あまり冒険好きではない奥さんや子供を連れて、かっこいいと ころを見せるという設定です。別にそれは逆でもいいです） 清水直樹（清水歯科医院）
ニューメキシコ州の Bisti Badlands という、冒険 にはうってつけの場所があります。ここはアメリカな のにどこにあるのかが非常にわかりにくく、まともな 地図もなく、公開されているGPSデータも全然合っ ていない、人もほとんど行かないところです。しか し、行けばどこか他の星に来た感じが体験できます。当然大自然で思いっきりしらける立て看板やトレイ ルはありませんし、許可をとらずにテントをどこにで も張れます。２マイルも歩けば面白いところに出ら れるので、日帰りもできますが、一泊テントを張り、夕 焼けや星を見ると最高です。携帯もほぼ圏外で、外 界からも切り離されます。家族だけで軽く冒険気分 を味わえる、まさにワンダーランドです。水は一切な く2日間 5人家族で食事用の水も入れ合計２０リッ トルとカメラを僕が、あとは皆でテントなどを分担 し、暑いので昼すぎに出発。アウトドア好きの僕の 奥さんですら、修行みたいといって嫌がっていまし た。というのも、訪れたのは７月の一番暑い時で、初めはただの砂漠だし、ミッキーマウスもいないし。 でも１時間も歩けば、かすかに何とも言えない“ らし き ”風景が見えてきます。奇石群です。僕は写真撮 影に夢中、子供たちは本当に何をやってもOK、走っ たり、丘に登ったりです。順番待ちなんてありません し、結構地面が柔らかいので転んでも平気です。誰 もいない星に降り立った気分です。奇石がたくさん ある面白そうなところにテントを張ります。この星す べてが自分のものみたいな錯覚に襲われます。夜は 花火をしたり、上の子は山のてっぺんで思いっきりト ランペットを吹いていました。
人がいないとはいえ、結局は公園（？）内だし、GPS も持ってるし。たしかにこれは冒険ではないかもし れない。ただ僕たちはプロの冒険家ではないので、 衛星のGPS は必須です。でも、すべて自力でやらな いといけないし、誰もいないし、風景は完全に地球 のものではないし。人のいる気配がとにかくしな い。月に降りた宇宙飛行士はこんな感じだったのではと、勝手に思えてくるような場所。自分の中では十 分脱システムで、普通の旅行とは一線を画すワクワ クするような冒険旅行です。 こんな異星の様な場所で、GPSを頼りに進み、テ ントを立て、食事でも用意すれば、家族から一目置 かれることは間違いなし、それでもだめならご心配 なく。車で軽く（と言っても約５時間）Taosまで走り、 みんなを温泉に浸けてしまえば、水に流してもらえ るはずです。Ojo Caliente は 部屋にプライベートの 温泉もついてるので冒険の後にはお勧めです。たま にはこんな冒険旅行はどうですか？僕の奥さんもし ばらくして、「あれ今考えてみると、良かったよねえ。 もう少し涼しくなったらまた行ってもいいかも」と か、子供も「変わったところに連れて行ってもらえる ので、いい」とか、ぼそっと言っています。面白いこと にプチ脱システムを経験することで、既成概念にと らわれず、今までの価値観を見直すきっかけにもな り、冒険に限らず芸術分野や、さらには日常生活ま で、色々考えさせられる経験ができると思います。Gulfstream 2018年11月号参照
Badlands photo galleryページもご覧ください。
