あけましておめでとうございます。とはいえこれを書いているのはまだ2017年です。昨日はヒューストン日本商工会の50周年パーティーでした。
僕もヒューストンで開業して今年で20年になりますので、会場にも面識のある方々が多くお見えになられており、お話をしていてよく言われた言葉は“先生、お忙しいのにいろんなところに行かれて大変でしょう”とか、僕の奥さんにも“変わったところに沢山行っておられるようでいいですね”、極めつけは航空会社のA松さんに“カリフォルニアから、先生のご活躍を拝見しています!”と言われ、たぶん今までの流れから歯医者には一切関係ないことだろうと思いつつ、それは何ですかと一往聞くと、“ガルフストリーム見てますよ!いろんなところに行かれてますねえ”だった。フェイスブックでも診療所の陽気なスタッフにおだてられて、ハロイーンの仮装をしたり、アストローズやら、クリスマスやらの写真をアップしたりしてるので楽しいイメージのみ先行していることが判明。しかし実は、本業の歯医者のほうもちゃんとやっております。昨年はドイツ屈指のカメラメーカー、カール・ツァイスの後援で歯科用マイクロスコープのインストラクターの講習も受けてきました。カメラ好きの僕としては、光学器具は一番の興味の対象です。現在一般歯科でマイクロスコープを導入している歯科医師はテキサスにはほぼゼロです。歯科治療の正確さはマイクロスコープにより格段と上がります。 というわけで、これから書かせていただくフォークランド大冒険の話もどうぞ安心してお聞きください。
フォークランドと言えばあのフォークランド紛争の舞台というイメージですが、実は野生動物、得にペンギンをはじめ野鳥の楽園です。基本的にここに住む鳥は人間をあまり見たことがないようで、ヒトを見ても全く逃げません。超広角フィッシュアイレンズでも鳥の撮影が可能です。冬休みシーライオン島に約5日間、私にとっては、写真撮り放題の楽園でも、子供たちには、テレビもない、Wi-Fiもない、本当に何にもない荒野と鳥、すぐに飽きるのではと思っていましたが、子供たちはもう朝から夜中まで1日中遊び続けていました。
夏なので真夜中近くまで日は沈みません。宿のすぐ外で野生のペンギンやゾウアザラシに接近、私はさらに朝の3時くらいから写真。くたくたになるまで遊べます。地面は一面に変わった苔のカーペットでふかふかです。蚊もいません。
ここシーアイランド島は宿がただ一つ、人間はこの広い島の中に20人くらいしかいません。そこら中にペンギンのコロニーがあり、卵を抱いたり、ヒナを育てたり、子供ペンギン同士で遊んでいたり、えさを求めて海に行ったりと、一日中大騒ぎです。ゾウアザラシたちは草むらで大音響のイビキををかきながら気持ちよさそうに昼寝をしています。一旦夕食のため宿に徒歩で帰る途中、海から戻ってきた無数のペンギンたちも一緒に宿の近くのコロニーによちよち歩いて帰っています、自分たちがペンギンの生活の中に当たり前のように同化されます。まさに日本で夕方さんざん遊んだ子供たちが家に向かって帰っていく風景なのですが、人間の代わりにペンギンが歩いている異世界です。まるでほかの惑星か異次元の世界に瞬間移動させられたようで一瞬思考停止になり、頭がくらっときます。
宿のレストランの窓からは目の前にペンギンのコロニーが沢山見えます。夕焼けは果てしなくきれいで、地球上にまだこんなところがあるのかと不思議でした。この島のよいところは人間があまり入れないのでペンギンとヒトとの間に柵がないこと。こういう場所は誰かがいつの日か変なことをして柵が張られて面白くなくなってしまわないように願うのみです。ここで過ごした5日間は本当に不思議な5日間でした。子供達にも強烈な印象が残ったことだと思います。 帰路に向かう前にメインアイランドのボランティアポイント(地名)でキングペンギンの群れも見に行きました。さすがにまだ人里離れているのだろうけど、シーアイランド島からだとかなり現実の世界に戻った感じでした。でもここはキングペンギンのコロニーがあり、そのヒナたちもたくさんいます。体は大きく、今まで見たペンギンたちよりもっと人間臭く、仕草も面白いです。しかもエメラルドグリーンの海の白い砂浜に、たくさんいます。えっ何これ?と思うほど美しい場所です。ただここは観光客など人も多く(と言っても20人くらい、一か所にいます。)、ちょっとした立ち入り禁止のマークや、立て札もあり、シーアイランド島に滞在した後だったので、ちょっと興ざめな感じがしました。でも撮影にはこの上なく楽しいペンギンの写真が撮れる場所です。 気候が変わりやすくて風が強い島なので、飛行機も欠航が多く、帰りは1日飛行機が欠航しました。簡単に行けるところではありませんが、それだけの価値ある鳥の王国、いい意味での隔離された別世界でした。この状態がいつまでも続いてくれることを願っています。Gulfstream 2018年1月号参照
本誌に掲載しきれなかった写真は、ぜひFalklands Penguin photo galleryでどうぞご覧ください。旅行前、いろいろと情報を提供してくれた友人のプロフォトクラファーの福田幸広さんの写真集「PENGUIN LAND ペンギンたちの国 」もぜひご参考に。